広島家庭裁判所尾道支部 昭和34年(家)742号 審判 1959年3月05日
本籍・住所 広島県
申立人 長田ウタ子(仮名)
国籍 アメリカ合衆国ワシントン州 住所 広島県
事件本人 長田文子(仮名)
主文
事件本人長田文子を禁治産者とする。
本籍広島県○○郡○○町三一二番地長田勝郎を事件本人の後見人に選任する。
理由
長田ウタ子、長田勝郎の当廷における各供述及び医師下田広三の作成にかかる診断書の記載を綜合すれば事件本人長田文子は心神喪失の常況にあること明かにして右は事件本人の本国法により禁治産の原因あるをもつて主文の通り決定する。
(家事審判官 小林長蔵)
申立の実情
上記申立人は事件本人の母でありますが、上記文子は申立人等夫婦が明治三二年頃渡米してワシントン市○○○○で夫長田良一が○○業を営んでいる当時、西歴一九二八年○月○○日午前○○時夫婦の間に出生した長女であります処生来智能の発育が不良で、小学校へ入学させても一般の児童と並行して進まず、僅か一ヶ年にして退学のやむなきに至り其の後両親の許で父母の保護の下に成長して来た。
齢三〇歳にして精神年令三歳程度の智能しかなく、俗に言う馬鹿の状態で心神喪失の状況にあり快復の見込み全くない次第であります。
然る処事件本人は出生地米国の国籍に在るので、日本に帰国後久しきに亘るので日本に帰化の手続をとらんと思うが心神喪失者であるので禁治産者の宣告を求める為本申立に及ぶ次第であります。と同時に禁治産者長田文子の後見の選任をも求むるものであります。後見人には、父又は母が適任者であります処、何分両親とも老令の上に、父は最近突如発病して意識不明の状態にあり命旦夕に迫り居り、又母も老令の上病弱のため親戚にある長田勝郎を最適任者と致しますから同人を御選任下されば幸いと存じるものであります。